2025.12.01
地域主導で高架下に遊び場を! 新たなにぎわいをまち全体へ広げる「初黄・日ノ出町地区」のエリアマネジメント

横浜市、日ノ出町・黄金町・初音町エリアの総称、「初黄・日ノ出町地区」。かつて特殊飲食店舗(いわゆる違法風俗店舗)が密集し、風紀が乱れた京急沿線の高架下が、20年以上もの年月をかけていま、まちのにぎわいを創出する場所に生まれ変わりつつあります。
その潮流のひとつが、京急線黄金町駅の高架下スペースを活用した、子どもたちの遊び場の設置。2025年5月、エリアマネジメント活動を行う京急電鉄(以下、京急)と地元住民を中心とする初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会『まちづくり推進部会』、NPO法人黄金町エリアマネジメントセンターが連携し、京急線日ノ出町~黄金町駅間の高架下スペースの一角に、『黄金町みんなのひろばロックカク』をオープンしました。
今回は、「初黄・日ノ出町地区」の高架下がたどってきた歴史や、この新たな取り組みに至るまでの経緯、今後の展望について紹介します。
違法飲食店の一掃と、アートによるまちづくりの歴史
「初黄・日ノ出町地区」に面する大岡川沿岸は、戦後、違法飲食店が立ち並び、京急電鉄である湘南電気鉄道の高架下や高架沿いは、違法飲食店が密集していたため、当時は地元住民も子どもたちを近づけませんでした。
2000年代に入ると、京急高架の耐震補強工事に端を発した小規模店舗による違法な営業行為が地域に拡散、拡大した状況を改善すべく発足した「初黄・日ノ出浄化推進協議会」が視野神奈川県と連携し、違法飲食店を一掃する「バイバイ作戦」を実施。警察と自治体、地元が三位一体となって高架下、高架沿いの浄化を進めました。

さらに2008年には地元のNPO法人黄金町エリアマネジメントセンターがアートを活用したまちの再生プロジェクトを開始。違法飲食店の立ちのき後の店舗を活用したギャラリーをオープンするなど、現在まで「アートによるまちづくり」が続いています。
この活動の結果、「初黄・日ノ出町地区」は、「アートのまち」としてアーティストやアートファンに知られるようになりました。
地域の子育て世代の声から生まれた、高架下の遊び場
一方で京急線黄金町駅の高架下スペースは、違法飲食店の立ちのき以降、その運用の難しさから活用方法が決まらず、長年金属製の塀で囲まれていました。そのため、高架下沿いの道は暗く、人通りは減少。地域住民からは、「塀を撤去し、明るく安全な通りにしたい」「遊休地となっている高架下スペースを有効活用したい」という声もあがっていました。
そこで、高架下スペースを所有する京急は、初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会、NPO法人黄金町エリアマネジメントセンターなど地域と連携。2024年4月から9回に渡り、地元住民など約40人が集まり、高架下の活用法について話し合うワークショップ『ロックカクの楽しい活用アイディアと安心な運営を考えるカイギ』を開催しました。

このワークショップであがったのが、子育て世代の「遊び場がほしい」という声。周辺には子どもたちがボール遊びをできる公園が少なく、とくにボール遊びできる環境にニーズがあることがわかりました。
一方で、遊び場として開放する場合の管理の問題が課題に。周辺にはゴミ捨て場もあり、防犯面、清掃面をどうクリアするか、ワークショップでは何度も議論が重ねられました。
こうした話し合いを通じて、民間の公園として高架下スペースを整備する方針を決定。議論の結果、管理は京急からNPO法人黄金町エリアマネジメントセンターが中心となって運営することに着地しました。
こうして、2025年6月1日、京急線黄金町駅高架下に『黄金町みんなのひろばロックカク』がオープン。エリア内はフリースペースとボール遊びができるスペースに分けられ、ボール遊びスペースにはバスケットゴールも設置されました。

オープン同日に開催されたオープニングセレモニーは、ワークショップに参加した地域住民らが企画・運営を主導。建築を学ぶ地元大学生がサインづくりに関わるなど、地元の若手活躍の機会に。また、「子どもたちがスポーツを身近に感じられる場所にしたい」という地域住民らの思いから、地域のスポーツ選手による体験イベントやワークショップを開催しました。

地域主導のにぎわいづくりを高架下からまち中へ
地域の課題に向き合うため、今後も、遊び場の管理について京急、黄金町エリアマネジメントセンター、神奈川県警が連携を強化し、住民の理解を得ながら運営を行う方針です。

また、高架下の道に街灯を設置し、夜間も安心して通行できる環境を整えたり、近隣のゴミ捨て場を整備、移動するなどして、遊び場周辺の環境も整備していく必要があります。
「初黄・日ノ出町地区」の象徴である高架下をより明るく、クリーンな環境に整えるこの取り組みは、子どもたちが集うにぎわいを、遊び場から高架下全体、ひいてはまち全体に広げる第一歩となるでしょう。
キーパーソンの声
NPO法人・黄金町エリアマネジメントセンター・アーティスト/竹本さん
NPO法人・黄金町エリアマネジメントセンター・アーティスト/竹本さん
ーー初黄・日ノ出町地区でのアートによるまちづくりの経緯と竹本さんの関わり方を教えてください。
2005年の横浜トリエンナーレのスタッフをしたことを機に横浜に活動の拠点を移し、その後、ご縁があって2010年から初黄・日ノ出町地区でもアートによるまちづくりに関わるようになりました。いかに地域の方々と対話しながら、アートもとがらせていくか。ということが、表現の学びと挑戦にもなっています。
ーーワークショップの開催と、公園化のアイデアが生まれた経緯を教えてください。
地域の方を中心に組織された初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会のまちづくり推進部会に参
加した際、地域の方から「高架下を活用したい」というお話があがりました。そこで地域の幅広い層に参加してもらい、高架下の活用についてのワークショップが始まりました。
まずは京急電鉄の担当者の方とともに、高架下の活用法について各町内会でヒアリングし、意見を1枚の絵にまとめました。全員から出た意見をイラスト化することで、できるだけ多くの方の声を拾いつつイメージしやすくしました。この絵をもとにワークショップで議論を重ねた結果、高架下の公園化というアイデアの実現につながっています。


ーーひろばの管理に関するNPOとしての課題はありますか?
現在は、黄金町エリアマネジメントセンターがロックカクの鍵の管理を請け負っていますが、住民の方とワークショップを重ねて作った場所なので、今後は地域の方も一緒に管理していけると良いなと思います。
逆に良かったことは、ロックカクができて周辺のゴミが減ったこと。空気が入れ替わったような印象です。今後は、大人からも子どもからも愛される、地域の交流の場として発展させていきたいですね。