2025.07.21

「まちづくりを地域から」。まちの課題を自分ゴト化しコミュニティを自走させる、“まちづくり人材”の育成

「まちづくり」の新しい形がいま、各地で始まっています。

従来の「まちづくり」といえば、自治体や鉄道会社などの民間企業が主体となって建物や環境を整備する「ハード面」からの改良が主流でした。このような手法は大掛かりなインフラ整備や大規模開発、新規事業創出が可能である一方、そのまちで暮らす人、事業者の視点を反映しにくく、まちづくりを自走させる仕組みを構築しにくいという課題がありました。

こうした課題を受け、近年京急電鉄が取り組んでいるのが、地域を主体にし、自治体や企業が一体となって「ハード」「ソフト」の両面からまちをアップデートしていく新しいスタイルのまちづくりです。

2024年、京急線平和島駅周辺エリアでスタートした「平和島まちづくりプロジェクト」もそのひとつ。沿線のエリアマネジメント事業を手がける京急電鉄は、大田区、株式会社トレジャーフットとタッグを組み、まちの資産を活用しながら「まちづくり人材」を育てる新たなまちづくりを推進しています。

本記事では、プロジェクトの現在の取り組みと、今後の展望について紹介します。

まちづくり人材の育成目指し、コミュニティを発足

2024年からスタートした「平和島まちづくりプロジェクト」では、2027年までの3年で「STEP①まちづくり人材の育成」「STEP②事業の活性化」「STEP③コミュニティの自走化」という3つのステップを段階的に進め、地域と自治体・鉄道会社が一体となった「ソフト面からのまちづくり」を実施、まちづくりの自走化を目指すとのこと。

京急電鉄はプロジェクトが始動した2024年、第1ステップとなる「STEP①まちづくり人材の育成」に着手。京急沿線のエリアマネジメント活動「おおたnewcal」にて連携する地域住民や事業者、平和島でのまちづくりに関するヒアリングツ―ルに投稿した方、地域であいさつ回りからまちづくりへ興味関心を示した方などの“まちづくり人材”を集め、まちづくりコミュニティを発足するとともに、コミュニティの自走化に向けて伴走を開始しました。

コミュニティから生まれたまちづくりのアイデアを具現化

まちづくりコミュニティを自走化させるには、参加者である地域住民や事業者がまちづくりへの当事者意識を持つことが大切です。そこで京急電鉄は、コミュニティのメンバーが自分のまちに課題意識を持ち、リアルな目線での“理想”や、「こんな仕組みや取り組みがあればもっと住みやすいのではないか」といった“妄想”を話し合う機会をもうけました。

そのひとつが、メンバーがまちの理想像や妄想像を話し合い、まちの将来像を参加者同士ですり合わせていく「妄想シティトーク」。また、「妄想シティアクション」では、メンバーが実際にまちを歩いて公園やBIGFUN平和島、旧東海道、商店街をめぐり、まちの資産をどのように活用できるか、現場の課題なども把握しながらアイデアを練ったとのことです。

こうした活動を通して生まれたアイデアは、京急電鉄や自治体のサポートによって以下のように小さな施策から具現化され、地域主体のまちづくり施策として多くの反響を呼んでいます。

ミーティングでは、会議室ではなく、あえて事業者の店舗や居酒屋を活用

施策例①「はじまりの縁日」

「桜の木のある公園で桜の時期にイベントを」という「妄想シティアクション」参加者のアイデアをもとに、2025年4月に大田区立平和の森公園でイベントを開催。平和島まちづくりプロジェクトを通じて集まった地域事業者らが出展し、参加者同士で告知方法なども検討しました。当日は、18店舗が出展し、1000名程度の来場者を動員。そのうち店舗に400名程度が店舗に立ち寄ったとのことです。

施策例②「平和島の魅力発見フォトコン」

「自然や公園が多い平和島の魅力を普及させたい」というまちづくりコミュニティメンバーの意見をもとに、京急電鉄と大田区が企画し、平和島の魅力的な景色をSNSに投稿するフォトコンテストを開催しています。(2025年9月10日まで開催中)

施策例③「おおた自転車さんぽ」(2025年5月31日終了)

「地域の人や観光客に沿岸の魅力的なスポットをもっと知ってほしい」というまちづくりコミュニティメンバーの声をもとに、大田区臨海部や京急空港線エリアをシェアサイクルで巡ると先着でグッズがもらえるイベントを開催。エリアでのモビリティ活用推進にも貢献しました。

施策例④オンラインコミュニティ「じわじわ、平和島」の設立

平和島のまちづくりコミュニティとして立ち上げた「じわじわ、平和島」をオンラインコミュニティ化。LINEオープンチャットを活用し、オンラインでも参加できる体制を整えて、参加者間のコミュニケーションや自らの活動の発信ツールとして確立しました。

事業者への取り組みと、コミュニティの自走化目指す

2025年度、「平和島まちづくりプロジェクト」は「STEP②事業の活性化」を目指すフェーズに突入しています。本フェーズが指す「事業」とは、「収益事業(商い)」のみを指す言葉ではなく、「まちとしての仕組み」も包括しており、「事業の活性化」は、まちの仕組み作りに関する取り組みの定着なども含むということです。

具体的な取り組みとしては、まちの事業者の認知拡大、ひいては事業そのものの拡大に向け、地域事業者のまちづくりへの意識を高めると同時に、「自分のまちででこんな事業や取り組みをしたい」とイメージが広がる環境づくりを進めていくとのこと。
また、沿線外からの注目度を高め、「平和島をフィールドに事業をしてみたい」と感じてもらえるよう、「既存の事業の活性」にも取り組んでいくそうです。

京急電鉄は、地域発展の仕組みづくりを牽引する“ローカルプラットフォーマー”として、今後も本プロジェクトをサポートする動きが期待されるでしょう。

また、「STEP②」と並行して、「STEP①まちづくり人材の育成」も引き続き取り組みを続けるとのこと。2年目は、コミュニティのリーダーポジションとなる「コミュニティマネージャー」の輩出をミッションとし、最終目標である「STEP③コミュニティの自走化」を目指すことがわかっています。京急電鉄による今後の自走化のサポートと、地域コミュニティの変化に注目です。