2026.03.18

まちに新たな血流を生む拠点へ――。「Kawasaki Spark」から始める、「まちの拠点」となるアリーナ

京急川崎駅ちかくの自動車教習所跡地にアリーナを建設する「Kawasaki Arena-City Project」。株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)と京浜急行電鉄株式会社(以下京急電鉄)との共同事業である本プロジェクトでは、イベント時に限らず、日常的にまちの人々が集い、交流する「 まちの拠点」となるアリーナの実現を見据えています。

その構想を具体的に検証する取り組みとして、DeNAが企画・開設したのが、建設着工の遅れを逆手に取りオープンした「Kawasaki Spark」。そこで京急電鉄とDeNAが、地域住民や地元事業者が参加するスポーツ・文化・マルシェなどの多彩なイベントを開催。将来のアリーナシティが目指すまちのにぎわいを先行体験できる場をつくりました。本記事では、「Kawasaki Spark」オープンの経緯と、その取り組みの軌跡、成果を振り返ります。

建設遅延をチャンスに。アリーナ完成前から育む、地域と“場所”のつながり

アリーナといえば、「スポーツやコンサートを見に行く場所」そんなイメージを持つ人も多いのではないでしょうか?そんな固定概念を覆す、新しいアリーナの構想が今、京急川崎駅ちかくで温められています。

京急電鉄とDeNAの共同事業である「Kawasaki Arena-City Project」は、スポーツやコンサートといった大規模なイベントがない日も365日、駅前からにぎわいを生み、川崎のまちへと広がっていく「まちの拠点」となるアリーナを目指すもの。本プロジェクトは2023年度末にスタートし、2024年10月、専門工事業者の人員不足などにより、開業時期が見直され、2030年10月に開業予定となることが発表されました。

そんな状況を逆手に取り、DeNAが企画・開設したのが、「Kawasaki Spark」。着工までの期間、建設予定地を公園として地域に開放。設計会社「オンデザインパートナーズ」の力を借りて、「アリーナ完成前から“場所”と地域のつながりを育む」試みを行いました。

かつて自動車の運転を練習したこの場所を、今度は「未来のアリーナをみんなで楽しむ練習をする場所」へ。そんなコンセプトのもと、路面を活かした教習所跡地らしいストリートを活かしたアートやバスケットボール、柔軟に動かせる仮設ファニチャーを配置。「車を運転するための学校」を、誰もが自由に使いこなし、試行錯誤できる「人のための公園」に転換したのです。

京急とDeNAが得意分野を生かして連携。イベントを企画・運営

DeNAと共同でアリーナシティ開発を進める京急電鉄は「Kawasaki Spark」の開設にあたり、イベントの企画・運営で連携。エンターテインメント事業が得意なDeNAがバスケットボールやスケートボード、盆踊りなどのコンテンツを展開する一方、地域にネットワークを持つ京急電鉄が地元のコミュニティや京急沿線子育て応援ネットワーク「Weavee(ウィービー)」のつながりを活用するなどして地元の事業者や地域団体をつなぎ、それぞれの得意分野を生かす形で「Kawasaki Spark」を盛り上げました。

こうした連携で生まれた「TRY! DAY」は、さまざまな企画を通して沿線の住民が集まる イベントとなりました。「Kawasaki Spark」がオープンした2025年2月〜11月の8カ月間で、計3回の開催が計画されました。

第一回:アリーナテーマのスポーツと夜の活用を検証

第一回目となった8月の「TRY! DAY」では、訪れた人がバスケットボールやスケートボードなどのアーバンスポーツに参加できるコンテンツを用意。プロバスケットボールクラブ「川崎ブレイブサンダース」の米須玲音選手とのミニゲームに参加したり、スケートボードの体験会を行ったり、日没後には元教習所の建物をスクリーンとして活用してまちづくりに関するプレイヤーを集めたトークイベントを行いました。

8月でも日が落ちれば涼しく過ごせます
パブリックスペースについて討論しました

 

また8月末には花火、たき火、バー、ナイトシネマなど、夜の「Kawasaki Spark」の活用方を考えるイベント「TRY! ナイトピクニック」を開催。イベントを通して、地域住民に「Kawasaki Spark」の認知を広げました。

「川BON!祭」には多くの来場者が訪れ、大きな盛り上がり。未来のアリーナからも多摩川にあがる花火が綺麗に見えることでしょう

前回の反省点も生かし、コンテンツの順番やマルシェの位置を工夫することで来場者の滞在時間を伸ばした結果、1日に約2,000人の方が来場され、会場は照明が落ちる時間までにぎわいました。

ナイトシネマも開催しました。
好評につきキッチンカーは売切続出。

     第三回:雨天中止から生まれたつながり。事業者同士が交流

第三回目となる10月の「TRY! DAY」は、同日に京急川崎駅の改札内で開催した「京急川崎JAZZステーション」とも連携し、ジャズ・読書の秋・映画・ハロウィンパレードなどをテーマに企画されていたものの、当日は悪天候により中止に。スピンオフ企画であった「TRY! ナイトシネマ」も含めると四回目の開催となるはずであったこの回は、DeNAと京急電鉄によるイベントの集大成であったので、企画チームの悔しさは大変なものでした。

しかし落胆の中、当日にショートフィルム上映会を行う予定であった移動映画館「キノ・イグルー」の提案により、イベント関係者を招いたインナーイベントが実現 。「TRY! DAY」に参加予定だった地域の方々やKawasaki Sparkでつながった方々などを京急ミュージアムに招待し、叶わなかった映画上映会が開催されました。このイベントは地元の“ひと”や“地域”とアリーナ計画地とのつながりを可視化することになり、「Kawasaki Spark」が地域の人々にとって「自分たちの場所」であるという認識を共有する絶好の機会となりました。

夜の京急ミュージアムでの上映会には特別な時間が流れていました。

また、「TRY! DAY」の裏側では、京急電鉄・DeNA・設計チームが密に連携し、地域住民や事業者の「やってみたい」という声をヒアリングしながら、共にコンテンツを創出する姿がありました。開発側が一方的に提供するのではなく、地域の方々がそれぞれの得意分野を持ち寄り、共に「トライ&エラー」を繰り返したプロセスそのものが、強固なコミュニティの土台になっていく。その様子は、本取り組みの大きな成果のひとつと言えます。

クロージング:8カ月間の歩みを振り返り

2025年10月31日〜11月2日の3日間で行われた「KAWASAKI CARNIVAL」の最終日には関係者でのクロージングイベントを企画。「Kawasaki Spark」に関わった人々がこれまでの取り組みを振り返る時間が設けられ、関係者が思い出を共有。地域に対する仲間意識を確認したことで、地元企業や団体との関係構築につながりました。

素敵な時間を作ってくださったキノ・イグルーの有坂さん。

「Road to Arena」の寄せ書き。 
川崎市長も挨拶に来てくださいました。

「Kawasaki Spark」は、オープンからクローズまでの8カ月間、地域に波及する“アリーナ開業後のにぎわい”を先行体験できる場を提供しました。この取り組みにより、地域事業者や地元の人々の期待感が醸成され、駅から自然に人が流れる「まちの血流」を生み出す“にぎわいの拠点”としての可能性も、示すことができたと言えます。

開発のために高い仮囲いで早々に場所を閉ざしてしまうのではなく、あえて地域に開き続け、実際に使うことで土地の可能性を確かめる。短い期間であっても、地域とともに試行錯誤した時間は、2030年に完成を目指すアリーナの風景をより豊かで愛着のあるものへと変えていくはずです。

Sparkからアリーナへ。地域の日常に根づく空間を目指して

現在、「Kawasaki Spark」跡地は着工準備が進められています。京急電鉄とDeNAは今後も、駅前周辺や河川敷などを地域事業者や住民とともに盛り上げる空間として活用する予定ですマルシェ、キッチンカー、音楽・文化イベントの開催など、DeNAと京急電鉄で連動した取り組みを展開する予定です。

こうした取り組みを通じて、「Kawasaki Spark」で育まれてきたコミュニティや人のつながりは、途切れさせることなくアリーナシティ全体へと継承。2030年のアリーナ開業時には、地域の日常に根づいた場所として、多様な人々が集い、交流し、共創の場となることを目指します。