2025.02.17

三浦初のブルワリーに遊休施設をマッチング。地域に新たな価値を生む「三浦newcal」のスモールビジネス支援

「MIURA brewery」の店舗外観
地元三浦のフルーツを使ったビールが楽しめる『MIURA brewery』

「地方で事業に挑戦してみたい」と感じている個人や事業者にとって壁となるのが、“拠点探し”です。これまでつながりがなく、知り合いもいないまちで事業を始めるにあたり、土地や店舗探しが難航したという話は、珍しいものではありません。

京急沿線、三浦エリアで地域課題の解決に取り組む「三浦newcal」は、そんなまちづくりの課題を解決するため、「三浦でチャレンジしたい事業者」と、「地域の遊休施設」をマッチングする取り組みを2022年からスタート。この取り組みから三浦エリアに複数のスモールビジネスが発生し、新たな観光資源やコンテンツを生んでいます。

2023年にオープンした、三浦市内初のクラフトビール醸造所、『MIURA brewery』もそのひとつ。今回は、『MIURA brewery』のオープンまでの経緯と、地域に与えた変化を紹介します。

ブルワリーの拠点探しに、「三浦newcal」が伴走

ビールを醸造するステンレルタンクの前でグラスに注いだビールを持つ男性
ビールを囲んで人々が集う様子に感銘を受け、ビール作りを学び始めた小松さん

『MIURA brewery』の仕掛け人である株式会社クラフトガレージ代表の小松哲也さんは、元外資系金融マン。会社員時代に仕事で海外を飛び回る中で、その土地土地のビール文化と人々の交流に出会い、日本でもその土地らしいビールで地元の人が集まる場所を作りたいという思いから、ブルワリーを持つことを決意したそうです。小松さんがブルワリーの候補にあげたのが三浦半島。豊かな食環境や、今後宿泊施設の整備が進み、宿泊観光客の取り込みを狙えることが決め手となりました。

小松さんが目指したのは、できたてのビールを観光客に提供できる、タップルーム併設の醸造所。構想をかなえるには、ビールの醸造タンクを設置できる広さのある建物が必要でした。そこで、もともと三浦市にゆかりのない小松さんが、理想的な物件を見つけるために活用したのが、「三浦newcal」による事業者と遊休施設のマッチングです。約1年半の間、「三浦newcal」に加盟する地域事業者、京急電鉄とともに、店舗探しや商品の販売先の確保、販促計画の立案などに取り組み、2023年11月、三浦市の三崎地区に『MIURA brewery』をオープンしました。

​​「その土地のビール」が三浦ならではのコンテンツに

金色のビールタップが並ぶバーカウンター
醸造所のとなりには、クラフトビールを味わえるタップルームを併設

オープンからおよそ1年。三浦市初のブルワリーとして、観光客はもちろん、地元の人にも親しまれる店となった『MIURA brewery』は、これまで、3つの視点から三浦半島の課題解決に貢献してきました。

ひとつ目は、観光客の滞在時間の延長。都心から近く、日帰り観光がメインとなっている三浦市では、観光客にできるだけ長く滞在してもらうため、夜のコンテンツを充実させていく必要がありました。タップルームを併設した『MIURA brewery』は、宿泊観光客がこの土地ならではのビールを飲める場所として人気を集め、滞在時間延長に貢献しているほか、宿泊滞在者の満足度にもつながっています。

高架下のスペースに屋台が並び、大勢の人が集まる様子
三浦海岸駅前で開催された『ビールまつり』には多くの人が訪れた

ふたつ目は、イベントを通した集客です。マリンスポーツや海水浴がメインコンテンツとなる三浦では、観光客が少なくなる秋冬のコンテンツが課題でした。三浦市初のブルワリーである『MIURA brewery』は、周辺エリアのブルワリーとともに三浦海岸駅前などでビアフェスに出店。観光客が少なくなる秋冬にも展開できることから、年間を通しての集客が可能になりました。

「MIURA brewery」のラベルのついた瓶がテーブルに3本並んでいる様子
お土産用の瓶ビールは、モダンなロゴマークが印象的

みっつ目は、三浦の特産品や魅力の発信。三崎港を有し、まぐろが知られている三浦エリアですが、潮風を浴びて育つ露地野菜やフルーツにも力を入れていることは、あまり知られていません。そんな、地元三浦産のメロンなどの食材を使用したこだわりのクラフトビールは、小松さんが手作業で試行錯誤を重ね、開発したもの。三浦半島だけでなく近隣エリアのお土産屋でも展開され、三浦の食材がビールを通して多くの人に伝わっていることが伺えます。

事業、土地、人の掛け合わせが、地域に新しい価値を生む

「MIURA brewery」のロゴが入ったグラスに目いっぱい注がれたビール
小松さんが手作業で仕込むクラフトビールには、三浦産のフルーツなどが使われていることも

まちづくりは、自治体や住民だけで取り組むものだと思われがちです。しかし、地方から人口が減っているいま、そのまちの資源を生かし、発展し続けていくには、外部からの視点や新たな発想をとりいれることも重要になりつつあります。

『MIURA brewery』のようなお店の存在は、三浦半島に新しい価値を生み出し、これからの三浦を活気づけていく重要な1ピースになっていくことでしょう。

「三浦newcal」が手がける事業者と遊休資産のマッチングは、『MIURA brewery』のように三浦でスモールビジネスに挑戦したい人の拠点探しを支援するだけでなく、地域の事業者同士や、京急沿線の他の地域の「newcalファミリー」同士、地域事業者とエリア外の事業者、企業をつないでくれるのだそう。また、事業計画や告知まで、トータルでフォローする体制ができていることから、つながりのない土地でも、安心して事業に挑戦できる環境が整っています。

三浦半島が「やりたいことがある人が、チャレンジできる場所」になっていくことで、今後もエリアに新たなスモールビジネスが生まれ、さらなる魅力、観光資源を生むことが期待できそうです。