2024.03.14
地域に新たな価値を創出。エリア特性を生かしたMaaSの活用例
MaaSの導入、地域の価値創出の一歩に。
京急沿線の地域事業者が地域の価値拡大を目指し、京急電鉄とともに取り組む「移動+住む・働く・楽しむ・学ぶ」の一元化「ENSEN(沿線) as a Service」(エンセンアズアサービス)が広がっています。
その取り組みの一環として、各沿線地域で進められているのが、移動や交通、観光サービスをシームレスにつなげ、ユーザーの利便性向上を図る「MasS(Mobility as a Service)」の整備。
各エリアの事業者は、京急電鉄が運営するMaaSシステム、「newcal」と連携することで、サイト内で経路の検索や事業者サービスの予約・決済を完結できるようになりました。
今回は、沿線の地域事業者が続々と導入を始めているMasSシステムの概要や、沿線地域事業者によるMasSの導入事例、その効果についてご紹介します。
猿島との相互集客でエリア内の回遊率アップ。
神奈川県横須賀市にある「無人島・猿島」への定期航路を運航する「株式会社トライアングル」(以下「トライアングル」)は、2023年10月、MaaS基盤「三浦newcal」内での予約・決済システム利用を開始しました。
これまで、猿島への航路を予約したユーザーが近隣エリアの観光情報の入手や施設予約をする場合、別のサイト、別のシステムから行う必要がありました。しかし、本システムとの連携により、猿島航路の予約やその他の三浦半島の観光情報の検索・予約が、「三浦newcal」内でシームレスに完結。観光移動の予約・検索一元化を実現しています。
「トライアングル」は本システム導入により、猿島・三浦半島内の他の事業者との相互集客が可能に。さらに、エリア全体の観光回遊率の向上が期待されています。
また、都心から近い三浦半島エリアは観光における滞在時間が他の神奈川県内の主要観光地と比較して短く、観光消費額が小さいといった地域課題があるなかでの打開策として寄与しています。
導入事業者が続々。利用傾向を踏まえた施策検討も見据える。
レンタサイクルの提供を行う『みうらレンタサイクル』や、クルージングツアーを運営する『葉山マリーナ』など、地域の観光事業者様が続々と本システムの導入を開始しています。
今後、導入事業者様が拡大していくことにより、各事業者のサイトから予約システムに入ったユーザーが自然と「三浦newcal」サイトに流入し、周辺の観光情報の検索・予約を行うことが期待でき、事業者間の相互集客の可能性が広がるでしょう。
また、ユーザーが本システムから予約・決済を行う際には「newcal 」への会員登録が求められるため、導入事業者は「三浦newcal」を通じて、地域で共通の予約決済基盤を活用できます。
顧客の情報や属性データを共有することが可能に。これにより、ユーザーの地域回遊の傾向がわかり、顧客ニーズやサービスの改善点の発見、新たな施策検討にも繋げていくことで、サービスの改善や顧客ニーズの発見、ひいては地域の新たな価値創出も期待できます。
観光だけじゃない。まちづくりを支えるMaaS基盤へ。
本システムは現在、観光事業の枠を超え、沿線地域の日常風景においても広がりを見せています。
たとえば、大田区エリアで展開する「おおたnewcal」では、移動式子ども食堂の実証実験に本システムを活用し、メニューの予約受付けを行いました。また、平和島駅に隣接するレンタルスペース「タイニーハウス」の予約・決済にも、本システムが導入されており、より暮らしに近いサービスでも活用が始まっています。
さらに、「newcal」内の「まちの情報」ページにある「ここに行く」ボタンを押すと、ワンクリックで現在地からのシェアモビリティを含む経路検索が可能に。2023年11月には、経路検索機能に京急バス接近情報機能を実装し、ユーザーの利便性向上が図られました。
なお、本システムのユーザー会員数は、2024年3月時点で約13万人、予約・決済の合計年間利用件数(決済を伴わないものも含む)は約12万件となっており、2026年度末にはユーザー会員数15万人、合計利用件数20万件までの増加を目指しています。
地域事業者の皆さんによる本システムの活用が沿線地域で広がることで、エリア特性に応じたMaaS基盤が構築され、「移動+住む・働く・楽しむ・学ぶ」の一元化による地域の価値拡大がますます加速していくでしょう。
今回、newcalの予約決済基盤や経路検索機能を活用することで京急沿線での日々の生活が豊かになると実感しました。
また、一般ユーザーだけでなく、沿線事業者にも予約基盤の導入による相互誘客の利点があることがわかりました。地域に新たな価値を創出するMaaS基盤「newcal」に今後も目が離せません。