2026.04.20
「交流」から「事業創出」の場へ。北下浦漁港を舞台に、三浦の未来を実装する「海業」プロジェクトが始動

京急電鉄が推進するエリアマネジメント活動「newcalプロジェクト」。そのコミュニティである「newcalファミリー」では、これまでメンバー同士のネットワーク構築を目的に「newcalファミリーmeetup!」を開催してきました。しかし、地域の持続可能性という課題に直面する今、その活動は「ネットワークの構築」から「具体的な事業創出」のフェーズへ。
こうした背景のもと、京急電鉄は2026年1月、三浦市および三崎観光株式会社と連携し、三浦海岸エリアの「北下浦漁港(上宮田地区)」を舞台に、事業創出をテーマとした「meetup!」を開催。地域資源である漁港や遊休資産をいかに活用し、収益を生む「海業(うみぎょう)」を実装するかをテーマに、熱気あふれる「作戦会議」が行われました。
本記事では、「newcalファミリーmeetup!」が交流会から事業創出へとシフトした背景から、オープンイノベーションの手法を取り入れたワークショップの全容、京急と「newcalファミリー」の次なるアクションまで、三浦の新たな未来像の実現に向けた、関係者たちの取り組みを紹介します。
ネットワークから実装へ。「Meetup!」再定義の背景
2026年1月、京急電鉄を中心に、京急沿線地域の事業者や自治体、企業等が連携し、地域活性化を目指すコミュニティ、「newcalファミリー」が、新たなフェーズに踏み出しました。これまで、年一回の交流の場として開催されてきた「newcalファミリー Meetup!」(以下「Meetup!」)を、具体的な事業を生み出す実践の場へと再定義。アイデア出しや構想にとどまらず、組織化と実装までを見据えた取り組みへと舵を切ったのです。
その背景にあったのが、コミュニティの広がりと同時に見えてきた次の一手への課題感です。過去3回の開催を経て参加団体はおよそ400にまで拡大。多様なプレイヤーが「沿線価値創出」への思いを共有できた一方で、「つながる」こと自体が目的化し、組織としての求心力や具体的なアクションへと踏み出す推進力が十分とは言えない状況も見えてきました。
三者の課題からスタートした事業創出プロジェクト

海業発祥のまちとして知られる三浦は、漁業従事者の減少や未活用の漁港施設の維持管理など、一次産業の持続可能性を喫緊の課題を抱えています。加えて三浦市は、漁業だけでなく教育・観光・健康・商業などを組み合わせた「海業(うみぎょう)」の推進を掲げ、北下浦漁港を海業の産業が集積する拠点として活用する方針を打ち出しています。
一方、三崎観光株式会社は、市から受託した「海業展開可能性調査検証業務」の中で、ゴミ問題の解決や将来的な宿泊施設・道の駅整備も視野に入れつつ、実効性のある事業モデルの構築を求められていました。調査の一環として先行して行われた2025年11月のマルシェでは、地元の生産者・漁業者が「良いお客さんに適正価格で売れる」という手応えを実感。漁協内にも「お金になる」という意識の変化が生まれ、行政・漁協・民間が連動して取り組む土壌が整いつつあることが確認されました。
こうした三浦市と三崎観光の課題・取り組みが、沿線価値の創出を目指す京急電鉄の課題と重なり合い、地域資源を生かした事業創出への動きが実現。第4回「Meetup!」として「漁港に海業の体験施設を作ろう!作戦会議」(以下、「作戦会議」)が開催されました。
北下浦漁港で挑む、実装前提の「作戦会議」

「作戦会議」の会場となったのは、三浦海岸駅から徒歩2分の『チェル Sea みうら(チェルシー三浦)』。当日は、北下浦漁港エリアに拠点を構える事業者や、独自の技術・知見を持つスタートアップ、事業化へのモチベーションの高いファミリーメンバーなど、37名のプレイヤーが集結しました。
会議はまず、現場視察からスタート。「机上の空論」を排し、実装を前提とした議論に入るため、参加者全員で舞台となる北下浦漁港を歩き、現状を確認。三浦海岸駅から徒歩圏内という利便性の高い立地でありながら、十分に活用されていない漁港の姿を自分の目で確かめることで、参加者それぞれが具体的な実現可能性の視点で考えるきっかけとなりました。
視察後は、事業を牽引する「プレジデント(リーダー)」と、それを支える「パートナー(仲間)」に分かれ、飲食・宿泊・体験・環境保全などの切り口でワークショップを開催。
収益性や継続性を意識しながら、地域資源を生かした具体的な事業アイデアを出し合い、発表へ。

発表されたアイデアには、三浦の自然や食、漁業を大切にしたい個人や企業が集まり、地域から世界へ循環型の事業を広げる「三浦まるごとサーキュラーエコノミーファンド(現代版陣屋)」や都内のスタートアップ企業の社員が働きながら滞在できる施設を整備し、漁業や農業、先端技術の実証実験や生産物販売を行う「域外マネーを呼び込む長時間滞在拠点の開発」。第二の人生で漁業に挑む人々の拠点づくりを目指す「漁業が一番近いまち~推し漁師プロジェクト~」などがあり、参加者一人ひとりの事業やアイデアを掛け合わせ、地域資源を最大限に生かす多彩な事業の芽が見えてきました。
なお、今回の「作戦会議」では、オープンイノベーションの手法も積極的に導入。日建設計グループが運営する事業協創拠点「PYNT(ピント)」との連携により、共創プラットフォームで培われた知見や手法を取り入れたファシリテーションが行われ、参加者同士の協働やアイデア創出をより実践的に後押ししています。
キーパーソンの声①
レンタルスペース『aiba』オーナー/須藤さん

土地や建物を活用して地域の課題解決に貢献したいという思いから、「Meetup!」に参加しました。三浦海岸の発展においては、三浦海岸の豊かな景観やゆったりと流れる時間を大切に、この土地ならではの魅力を生かした開発を進めることが重要だと考えています。
当日は、和やかで活気のある雰囲気の中、日建設計総合研究所の進行により意見交換が活発に行われました。新しい交流や憧れていた起業家の方との出会いもあり、参加して本当に良かったと感じています。
『このワークショップで、地域の事業者の「点」から新たな繋がりの「線」への変化を感じました。私自身も三浦の魅力発信を目的に、仲間と共に『虹♡マルシェ』の開催へ動き出しています。今後は、地域住民の満足度を高める取り組みとして、持続可能な地域づくりをキーワードに、廃棄野菜の活用や藻場再生などの環境保全活動、体験型イベントなど、「点」を「線」にしながら活動して行けたらと考えています。三浦の魅力を守りつつ三浦海岸全体の活性化に貢献出来たら嬉しいです。』
キーパーソンの声②
『株式会社SWELL』代表取締役・『株式会社Village Life』取締役/管野さん

三浦海岸エリアに都心のワーカーからの関心を集め、地域の魅力を発見・再定義したいと考え、「Meetup!」に参加しました。観光資源の魅力だけでなく、地域の事業者の方々とのつながりを通じて新しい事業機会を創出し、地域経済に貢献していくことが目標です。現在は、須藤さんが運営するレンタルスペース、『aiba』を活用したワーケーション拠点の事業化も検討中で、この場が実現の可能性を広げるきっかけになればと考えています。
当日は、さまざまな立場から三浦に関わる方々が集まりました。参加者それぞれの視点でポジティブなアイデアが飛び交い、地域住民の方と私のような非居住者、いわゆる「関係人口※」との交流も生まれ、大変有意義な時間となりました。「自分一人ではできないことも、この場なら実現できる」という手応えを感じる瞬間もあり、漁港活用という共通目的で地域の方と外部の事業者がつながった意義を強く実感しています。
※地域に住んでいないけれど、さまざまな形でその地域に関わる人々を指す言葉
今後は、この「Meetup!」をきっかけに始まった新たなプロジェクトを具体化し、京急電鉄様と連携しながら継続的にビジネスモデルを構築していきたいと思います。地域とともに成長しながら、三浦海岸の魅力を最大限に引き出す取り組みを進めていきます。
三浦発「海業」モデル創出に向けて

これまで育んだネットワークから、多様なビジネスの芽が生まれた、第4回「Meetup!」。しかし、取り組みはまだ始まったばかり。「作戦会議」から、「実行」へ。京急は今後も、今回生まれたアイデアの中から、漁港を活用したリトリートなど、実現性の高いものを選び、「Meetup!」やワークショップで試行していく方針を示しています。
最終的には、ローカルファンドの活用や行政・漁協・民間の連携を通じ、多様なプレイヤーが一体となる「海業」ビジネスの成功モデルを三浦から排出することを目標にしているということ。地域資源を守りつつ、新たな事業の芽を実際に育て、地域全体の持続可能な発展につなげる挑戦が、今まさに動き出しています。