2024.04.26
川崎市の未来をつなぐ公園利活用プロジェクト「公園を使いこなす!ゆるっとまるっとパーク大作戦」
「公園を使いこなす。」と聞いて、あなたはどんな使い方を思い浮かべますか?今回は川崎市の大型公園を起点に、「このまちでやってみたいこと」を持ち寄り、住民、企業、団体がゆるやかにつながり合いながら、チャレンジを続ける取り組みについてお届けします。
「ゆるっとまるっとパーク大作戦」とは
初詣参拝者で賑わうことで有名な川崎大師(平間寺)に隣接する大師公園。広さ約8万8千㎡ほどで、京急大師線「川崎大師駅」や「東門前駅」から徒歩約10分ほどの場所にあります。広々とした芝生広場、大型複合遊具、野球場やテニスコートがあり、家族で楽しめる大型の公園です。
川崎市では、市民、企業、教育機関などとの協働により、樹林地の保全や公園の管理運営に関する活動が全市的に広がっています。しかし、活動団体の高齢化や世代交代の停滞が課題となり、活動の持続性が危ぶまれています。これを踏まえ、市が大切にしてきた協働の取組を次世代に引き継ぎ、更なる発展を目指すために、公園等における持続的な協働の取組 「みんなが気持ちよくいきいき過ごせる公園の実現」を進めています。
こうして、地域に開かれた公共空間としての公園活用の取組みとして行われた実証実験が、「公園を使いこなす!大師でゆるっとまるっとパーク大作戦」(以下、ゆるっとまるっとパーク大作戦)です。
地域の方・企業・行政が集まりワークショップを開催
「ゆるっとまるっとパーク大作戦」では、事前に地域の方を集めたワークショップが2回行われ、様々な団体や企業が参加。そこでは各々が川崎市で実現したいことや、やってみたいことを話し合う中で、多くの団体が「公園で何かやってみたい」と言う共通の想いを持つことを確認し、それを実現するためにイベントの実施が決定。開催までに参画団体で打ち合わせを重ね、準備を進めました。
こうして、1回目の「ゆるっとまるっとパーク大作戦」は川崎市が主催となり、賛同する民間団体や企業と開催にこぎつけました。その後、1回目の開催時に参画していた大師エリアの地域資源を活用するクリエイティブ集団や市内の子育て応援団体、大師公園の指定管理を行う企業や京急電鉄などで組織する「公園をつかいこなす!大師でゆるっとまるっとパーク大作戦実行委員会」が立ち上がり、2回目を開催。民間主導での公園利活用が実現しました。
「ゆるっとまるっとパーク大作戦」ではテーマは決めずに、公園でできる・公園を使いこなすという視点で企画を進めます。大師ONE博 代表理事の奥貫 賢太郎さんからは、「自分たちのできることから、ゆるく和やかにやっていきましょう」というイメージから、「ゆるっとまるっと」という名前がつけられたのだという経緯をうかがいました。あえてジャンルで区切ることはせず、音楽・緑・防災・エンタメ・子育てなどから、やりたいことやできることを起点にした公園活用を目指しています。
公園でのイベントは、地域活性化と連動していくことで、さらに地域を盛り上げていける可能性を持っています。そう考えると、公園は地域活性化を担う重要な公共施設のひとつだともいえるのです。
第1弾は「公園に泊まろう!防災キャンプ」などを実施
1回目は2023年6月3日に開催され、1000人以上の参加者で賑わいました。
1回目のプログラムの一つに「公園に泊まろう!防災キャンプ」というものがありました。通常、公園でキャンプはできないのですが、大師公園が広域避難場所に指定されていることもあり、このプログラムでは緊急時を想定し、テントを張って一晩を過ごします。防災食を実際に味わうこともできる機会となりました。
大師公園の指定管理者である石勝エクステリアの北川さんは、実施するにあたって、従来の公園利用では実施してこなかった焚き火体験など、これまでにない試みに公園管理者としての不安もあったものの、新しい取り組みにあえて挑戦することで、今後の公園活用への実績にしたいと話します。当日は警備員を配置してセキュリティ面の対策をしたといいます。
第2弾は「民間企業主導での実行委員会方式」で開催
2回目は民間で組織された実行委員会が主導し、2023年10月14日に行われ、前回を超える1500人の方が公園での時間を楽しみました。
2回目のイベントでは、SDGsの体験ブースとして、学びながらこだわりの安心食材・試食試飲等ができるイベントのほか、「紙芝居キッズヨガ」という斬新なものも!
紙芝居師とキッズヨガのインストラクターがそれぞれできることとして、川崎市の子育て応援団体「コトキュンかわさき」スタッフのコラボレーションとして案を出し、開催に至ったのだそうです。2〜3歳の子どもたちが楽しみながら集中してヨガに取り組む様子に、参加者からは「こんなに小さな子でもヨガができるのね!!」と驚きの声が上がっていました。
各ブースには、公園を”遊具で遊ぶ場”や”癒やしの空間”と捉えるだけにとどまらず、健康を意識した取り組みの場や、子どもたちの体力作りの場でもあるようにとの思いが反映されているように感じました。
「みんなが気持ちよくいきいき過ごせる公園の実現」のこれから
京急電鉄は、第1回から「ゆるっとまるっとパーク大作戦」の飲食エリアを担当。キッチンカーを誘致し、心地よい公園空間づくりを行いました。またイベントのポスターやチラシを沿線各駅に掲出するなど、取り組みについての広報支援を行いました。
2回の開催を経て、これからの課題も見えてきています。コトキュンかわさき 松田さんによると、大師公園エリアは外国人も多いので、多様なファミリーが楽しめるイベントにしていきたいそう。また、大師エリアの子育て世代が「ここで子育てができて良かった」と思える街にしたい。そして、この街に誰も置いてけぼりにならない場所をつくりたい。と話します。
石勝エクステリアの北川さんからは、街の高齢化が進んでいることもあり、シニアの方にも楽しんでいただけるような取り組みも盛りこんでいきたい。また今後は公園を活用したい方へのアドバイスや、市民と自治体をつなぐ橋渡し役になりたい。とのことでした。
「ゆるっとまるっとパーク大作戦」3回目は、詳細な日時は決まっていないものの、開催することが予定されています。回を重ねるごとに運営の反省点が活かされ、どのイベントに参加しても適度な時間で移動できるようにタイムテーブルも工夫されるようになってきているのだとか。
公園という場を通じて地元の多様な企業・団体・個人そして自治体がつながり、異なる得意分野を活かしあって協働する「公園を使いこなす!ゆるっとまるっとパーク大作戦」。イベントをきっかけに団体や企業のつながりが拡がり、大師エリアでさらなるチャレンジや新たな取り組みが生まれ続けるフィールドづくりを目指しています。