2026.06.29
駅前の広場活用から始まるエリアリノベーション!南太田駅前広場「ひといきスペースDONDON」オープン
駅前の空地を活用し、京急線・南太田駅前に新たな“まちの居場所”として誕生した、「ひといきスペースDONDON」。地元NPOや、事業者、行政、住民らが集まって「まちに必要な場所とは何か」を考え、約3〜4年にわたり対話を重ねて実現した広場です。今回は、本プロジェクトの歩みと、そこから広がる南太田の未来について紹介します。
駅前商店街の課題と「何かできないか」という思い
きっかけは、南太田駅前のシンボルとして長年地域を活気づけてきた「DONDON商店街」の変化でした。当時の商店街は、地域の高齢化や人口減少、それにともなう店舗数の減少などにより、かつてのにぎわいが失われかけていたのです。
一方で、駅前には京急電鉄が所有する土地がありました。駅前でありながら周囲を店舗に囲まれた空間は、京急沿線の中でも珍しい存在です。
プロジェクトの始まりはおよそ4年前。「この場所を単なる通過点ではなく、まちのために活用できる場所にできないだろうか」そんな発想から、地域の人々と京急電鉄によるプロジェクトは始まりました。

特徴的だったのは、このプロジェクトが自治体や企業の主導ではなく、地元NPO法人「スーパー南太田」のメンバーをはじめ、シェアキッチン運営者や地域の人々が中心となり、地域主体でプロジェクトを進めてきたということ。商店街関係者や住民などが参加するワークショップを毎月開催し、「どのような場所が必要か」「人が滞留するためには何が必要か」といったテーマについて当事者たちが積極的に議論を重ねてきました。
地元主導で積み重ねた実証実験と「ひといきスペースDONDON」の誕生

プロジェクトを進めるにあたり、まず行われたのはまちや駅前に必要なものを考えるための実証実験でした。引き続き、NPO法人「スーパー南太田」の代表である海鋒美季さんやシェアキッチンのメンバーが中心となり、マルシェなどのイベントを企画・検証。ときには地元高校生が授業の一環として企画に参加したり、商店街や駅関係者も巻き込んだりと、イベントを通して新たな担い手とのつながりも生まれました。
また、継続的に行われていたワークショップでは、「ひといき」というコンセプトをもとに、プロジェクトの参加者自らが空間設計のアイデアを議論。
「人が座れるベンチを置こう」
「芝生があれば滞在しやすくなるのではないか」
「シンボルツリーに金木犀を植えたい」
そんな意見を一つひとつ検証し、コンセプトを具現化してきました。
「ひといきスペースDONDON」誕生
こうした地域主導の実証実験を経て2026年3月にオープンしたのが、「ひといきスペースDONDON」。誰でも自由にくつろげるベンチや人工芝、地域の人々に“香りの記憶”を印象付ける、シンボルツリーの金木犀など、「誰でも気軽にひといきつける」空間が生まれました。
名称には、南太田らしい温かいコミュニティを象徴する場所になってほしい、という意味を込め、長年地域に親しまれてきた「DONDON商店街」の名前を継承。商店街と広場をつなぐ存在を目指す、地域の思いが感じられます。
2026年3月28日に開催されたオープニングイベントは、ワークショップの運営者らが主体となって企画。商店街理事長が司会を務め、地域関係者や行政関係者も参加する、アットホームなお披露目会に。地元和太鼓の演奏をはじめ、地域色豊かなプログラムが並び、多くの来場者でにぎわいました。

オープンは“ゴール”ではなく“スタート”
「ひといきスペースDONDON」の完成は、プロジェクトに関わった南太田の人々にとって、完成はゴールではなく、“この場所をどう使い、どう育てていくか”、という新たなスタートとなりました。
たとえば、広場の運営管理は現在、京急電鉄とNPO法人「スーパー南太田」が協力しながら行っており、清掃や問い合わせ対応、掲示板の運営、植栽の手入れなどにも地域メンバーが関わっています。
「つくって終わり」ではなく、「地域で育て続ける」。その考え方こそが、この広場の価値を支えているのです。
キーパーソンの声
NPO法人「スーパー南太田」/海鋒美季さん

幼少期から南太田で育った現NPO法人理事長の吉水と、シムズキッチン代表の志村が「南太田を盛り上げたい」という想いで活動を始め、その後NPO法人を設立しました。
コロナ禍以降、地域イベントの減少や商店街の店舗数の減少により、人と人が関わる機会や場所が少なくなっていることに課題を感じていました。一方で、近年再開した「ドンドン縁日」では多くの人が集まり、南太田には地域を思う人や活動がたくさんあることも実感する日々。そうした人や活動が出会い、発信できる場所が必要だと考えていた中で始まったのが、この駅前広場のプロジェクトです。私はプロジェクト開始後にリーダーとして関わり、地域の皆さんと一緒に取り組んできました。
印象的だったのは、ワークショップだけでなく、マルシェやイベントなどの実証実験を重ねながら地域の皆さんと一緒に場所づくりを進めてきたことです。高校生や小学生、商店街、行政など多様な主体が関わり、「この場所で何ができるか」を試しながら形にしてきました。その積み重ねが、「ひといきスペースDONDON」の誕生につながったと感じています。
オープン後は、駅前で人が立ち止まり、会話をする風景が見られるようになりました。 地域活動の情報発信もしやすくなり、学校や地域団体、商店街、事業者など、これまで接点の少なかった人たちがつながる機会も増えています。また、「こんなことをやってみたい」という相談をいただくことも増え、地域の新しいチャレンジが生まれるきっかけになっていると感じています。今後も、これまで地域で大切にされてきたものをみんなで次の世代へつなぎながら、新しい出会いや挑戦が生まれる場所であってほしいですね。
南太田のこれから——駅前広場からエリアへ
京急電鉄は現在、南太田エリア全体を視野に入れたエリアリノベーションを計画中。大岡川沿いのプロムナードを軸に、黄金町や日ノ出町、さらに関内・関外エリアとの回遊性を高めることで、人や文化が行き交う魅力的なまちづくりを目指します。
一方、プロジェクトを牽引してきたNPO法人「スーパー南太田」の海鋒さんや地元の人々にも、理想とするまちの姿があります。DONDON商店街の再活性化はもちろん、常照寺周辺や空き建物の活用など、地域の新たな交流拠点づくりを通して、人が集い続ける場所づくりに向けた新たなアイデアが生まれています。
駅前広場の誕生は、単なる空間整備にとどまりません。地域の人々が主体となつて、企業は支援に回る、そんな歩みが、自分たちのまちの未来を描く新たな一歩となっているのです。